4月6日練習第一日目、練習終了後に時間を頂き、
センチュリー指揮者室にてインタビューさせていただきました。

インタビューには偶然来られた元当団フルート奏者で現在指揮者として
活躍なさっている関谷弘志さんと
学生時代広上さんと同時代東京音楽大学で同じトロンボーンを
勉強なさってた当団トロンボーン首席近藤さんに
インタビュアーを務めて頂きました。




-CONTENTS-
指輪とプレスレット
合唱団で居眠り!?
民音指揮者コンクール
オケは鮨屋の親父集団!?
シェフ広上

をクリックするとその項目にジャンプします

近藤(以降K):今日はお疲れの所インタビューに応じてくださってありがとうございます。
早速始めましょうか・・・。
[指輪とブレスレット]
広上(以降H):どうも。先輩お久しぶりです。
K:その先輩っていう言い方やめてよね。じゃあ始めましょうか。広上さんはセンチュリーに来るのは何回目でしたっけ?
H:もっと来ているような気がしていたんだけど今回で2回目です。
K:えっ?もっと来てるんじゃないですか?っでトロンボーンのある曲を避けてるとか・・・。
H:今回も楽しい練習ができて幸せです。皆さんほんと上手だし・・・
K:ところで指輪の数減りましたね。二年前に会ったときはもっとたくさんしてましたよね?
H:ええ、この間義母を亡くしたこともあって少し減っています。
それに前みたいにあんまりたくさんしていると宗教関係と間違えられるし・・・・(笑)

今しているのも本番ではキラキラし過ぎるから取るんですよ。
K:このブレスレットも健康器具ですか?

H:ええ・・・まあそうです。

K:かつては全部の指に嵌めてたんですよね。
[back to Top]
----- 閑話休題 -----
K:ところでピアノは幾つくらいから始めたんでしょう?

H:ピアノは6才くらいからでしょうか。今もうほとんど弾かなくなったから
すっかり下手くそになってしまいましたね。
それから学生時代はヴィオラを弾いてましたね。
汐澤先生のオーケストラで未完成だとか運命弾いてました、ファーストとサードポジションだけでね(笑)

[合唱団で居眠り!?]
K:ほら歌も歌ってたでしょ。東京音大の合唱団が初めて第九を歌ったとき僕たち
一緒に並んでテナー歌ってたんですよ。
僕もちびだけど広上君もちびだから最前列で並んでね。
H:僕が入学したのが確か1979年だったんです。その前にも一回プロオケとの協演はしたんだけど
あまりに下手だったのでセルジュ・ボドーに嫌われてそれから数年間何処のオケとも歌ってなかった。
そうこうしているうちに日フィル・渡辺暁雄さんからオファーがあって、

これを逃すともうチャンスはないとばかりに皆必死で頑張ったんですよ。
そのお陰で今でもプロオケとの協演は続いています。
K:最近まで学生の中に混じって歌ってたっていう噂聞いてるよ(笑)
H:そうコバケン(小林健一郎)の時にね。でもビール飲んでたもんだから途中で
うっかり寝てしまって怒られちゃった(笑)
K:広上君はね学生時代、キャンバスのどこにいてもその場の雰囲気にあった歌を絶えず口ずさみながら棒を振って歩いている奴だったね。
H:近藤さんこそ! 皆のあこがれの先輩だったんですよ。
I:同時代に大学におられたんですよね?学年はどうなってたんですか?
H:僕と指揮の現田が同級で近藤さんは研究科だったかな?
K:年は僕が二つ上だけど学年は4つ違いの入れ替わりかな。授業でもよく一緒でしたよね。
[back to Top]
[民音指揮者コンクール]
H:一番印象に残っているのは僕が4年生の時に受けた民音指揮者コンクールで、
近藤さんが審査のためのオーケストラ、その時は新星日響だったんだけど
その中にエキストラで入ってくれてたんですよね。
K:その時の受賞者はそうそうたるメンバーで皆一線で活躍してますね。
H:大野でしょ、十束、小田野、山下一史、そして僕。
K:あの時のコンクールはその個性的なメンバーが同じ課題曲を演奏していくわけ
だから本当に面白かったですね。
皆個性的な指揮者ばかりだったし。
H:そうですね。それから当時のコンクールは普通ある程度プロとして
経験を積んだ人たちが入賞していたんだけど
あの年に限って全員が学生だったんですよ。1982年でした。
その後一年間名フィルで外山先生(外山雄三)のアシスタントをしてました。
その頃はセンチュリーの楽団代表の三宅さんが名フィルでホルン吹いておられて

「それじゃ、わからへんよ」って言われてよく謝ってました(笑)

さっきも昔話していたんですけれど「上手くなったね」って言われました。
本質的にはなにも変わってないんですけれどね(笑)
K:その後コンドラシンの所へ勉強に行ったんですよね?そして有名になって帰ってきても
昔と同じ! 
僕が東フィルにいた頃も指揮者として振りに来たときでも
昔と同じように「先輩!!」って声かけてくれるんだモンね。
----- 閑話休題 -----
H:7年前来たときもセンチュリーって上手なオーケストラだと思いましたけれど
今日久しぶりに来てみると音に艶が出てきましたね。
I:この間はシューベルトの最初の方3番とハイドンの102番の無名のシンフォニー、
それと「皇帝」でした。
東フィル時代もそう思っていましたがオーケストラって指揮者によって本当に音が変わるんですよね。
今日もつくづく音が変わるものなんだっていう印象を強く持ちました。
H:いえいえ、常任指揮者とは違って偶に来るから珍しい、新鮮だっていうこともあるでしょう。
私は相手がプロであろうがアマチュアであろうが接し方は同じ。

先日もN響の「麻呂」(篠崎コンサートマスター)が設立した小学生から大学生
がメンバーのジュニアオーケストラを指導してきたのですけれど
接し方は今日のセンチュリーと全く一緒!
学生オケであろうが海外の一流オケであろうがなにも変えません。

そのオーケストラの持っている良いものをどうしたら引き出せるのか・・・
それが指揮者の仕事だと近頃思うようになってきた。
すなわち昔斉藤秀夫先生が残された名言

「下手なオーケストラはない。下手な指揮者がいるだけだ」

どんなに酷いオーケストラでも指揮者がきちんと練習すれば

良い演奏ができるということですね。
K:これは彼の性格からも来てると思うけど彼の話って楽しいでしょ。
その場の雰囲気が良くなるし僕たちも良い音出そうっていう気になるしね。
[back to Top]

[オケは鮨屋の親父集団!?]
H:それといい音が出たときに直ぐ褒めるっていうことかな・・。
もちろん褒め殺しは良くないし良くないときに褒める必要はないけれども、
出音を聞き分けるのが僕たちの仕事だから音が良くなったときにはっきりリアクションを出すこと。
ネガティブな減点法の練習ではなくてポジティブな練習をすることですね。

喩えてみればオーケストラの皆さんは寿司屋の親父が集まっていると思えば良いんです。

百人からの職人集団でそれぞれにその構え方や、指使い、わさびの付け具合に

こだわり持っているわけだね。
そこでもってオーナーが部下に命令するみたいに
「あんたのそこの包丁の握りが・・・」みたいな物言いすると怒られちゃうわけだ。

「じゃあお前やってみな」みたいに逆にやられちゃうよね。

そういう職人達を新しい厨房に集めてさあ次のイベントの為に今日はこういうメ
ニューを作りましょっていうのと似てると思う。

そう! 「音楽」と「料理」というのはものすごく似てると思う。

まず
「時間が経てば消え去る」   どんなにすごいコックでも次の日全く同じ味付けはできない。
「お客様に喜んでもらう」     「サーブ」の仕事だ。

同じ芸術でも絵だとか彫刻だとかデザインだと作品は残る。やり直しがきく。

推敲できる。
でも音楽の場合楽譜はレシピなわけです。

やり直しはきかないし、最後の微妙な味付けは職人の腕次第。

I:レシピには塩少々、胡椒少々っとしか書けないわけですよね、職人の腕次第だ。

H:そうそう。職人それぞれにサビの量、握りの強さそれぞれにこだわりがあるわけだ。
同じトロンボーン奏者でも3人いればそれぞれにこだわりもあれば、

自分にしかわからない筋肉の作り、唇の作りなんかがあるわけ。
そういう職人百人集めてすごいレシピをやるっていうのがオーケストラなんですよ。

料理も人に喜んでもらう職業だし音楽も同じで本当にいい職業だと思います。

I:指揮者っていう仕事は我々にインスピレーションを与えるのも大事な仕事です
けれど、普通それを説明しようとして長々と説明してかえって我々のテンション
を下げてしまうことって往々にしてあるんですよね。
でも広上さんの場合その例え話が本当に面白くて飽きない。

「そのイメージ面白いからじゃあやってみようじゃないか」っていう気にさせられるんですね。

H:本当は指揮者っていうのは喋らない方が良いんだけれどね。

K:冷めない内にお客さんに食べてもらいたいですね。(笑)

H:そうですね。今日の練習も最後の方はわりとさっと終わったでしょう?
練習の順番も大事ですね。一番最初にまず2楽章から初めてしつこくやったでしょう。

僕のつたない経験からですけれどこういう順番で練習を進めていって
本番に一番テンションが高まるように練習を持っていくのです。

大事なことでも色々やり過ぎて練習中に山が来てしまっては良くない。

ゲネプロ(舞台での最終稽古)でもそうです。
本当はもうちょっとすれば良いんだけれどもう少しっというところでやめておく。

このさじ加減というか火加減が極意ですね。

K:広上さんってグルメですものね(笑)
[back to Top]
[シェフ広上]

H:シチューやカレーなども二日も三日もグツグツ煮込むと良い味出るでしょ。
その煮込み方、その時間の加減が大事

I:時間をかけるって大事ですよ。練習が終わった時点と次の日もう一度同じ所を練習するときとでは
明らかに響きのこなれ方が違うってありますよ。
その間個人練習するわけでもアンサンブル練習するわけでもないのにね。

H:そうですね。今日も僕は時間の話を随分したと思いますが今も関谷さんとも話してたんだけど
指揮者の仕事って結局時間をコントロールするっていうことに尽きるんですよ。

野球の監督や映画の監督とは違ってこれはその瞬間もう絶対的なものですから

プレーヤーの皆さんにとってはとてもフラストレーションが溜まる事です。

今日のような音楽だと特に個人個人感じ方が違うわけです。

でも指揮台に立っている人間に完全に支配される。

作曲家がイメージしていたテンポというものと

プレーヤーの皆が一番弾きやすいと感じるものとの間にずれがありますね。
オーケストラの力量によっても違うし、個人も違う。
これを指揮者が絶対時間でやってしまうと
凄く退屈なモノになったり弾きにくいテンポになったりするわけ。

H:これは音楽家の年齢にも関係すると思いますね。
20代のプレーヤーなのか50代なのかっとかね。

指揮者でも言えることで20代の時に大家の遅いテンポをまねしても

どうにもこうにも退屈なモノになる。

最近そういう微妙なところの見極めが少しつくようになってきたんです。
それはオーケストラによっても違う。

そのオーケストラにとって生理的に良いテンポというものもあるわけで
それをつぶしてしまわない方が良い。

でも指揮者はただ様子を見ればよいっていうものではなくて

そのオーケストラ固有のものの何処をいじれば良くなるのか良く考えないといけない。
下手にいじると全体のバランスが崩れてかえって悪くなる。

自分の味付けをどうすれば出せるのか・・・とにかく良く聞くことです。

I:広上さんの仕込んだシチューが本番でどんな味を出すのか私達も楽しみになってきました。
これから後二日間の練習、よろしくおねがいします。
今日は練習の後のお疲れのところお時間頂きどうもありがとうございました。

2004.4.6作成



戻るときはウィンドーを閉じてください


interviewer:kondo,sekiya&kaz. Photo by yasunaga