[小泉氏インタビュー@クラシックサロン2004.6.4]
今回は定期演奏会の練習最終日午後7時よりセンチュリー練習場サロンで行われた
事務局主催「センチュリークラシックサロン」での模様を取材させていただきました。

事務局(三宅楽団長):それではクラシックサロンを始めさせていただきます。
いきなりですが今まで続けて参りましたこのクラシックサロンは今回で一応終わらせていただきまして、9月からの新シリーズではもっと楽員との密着度の高いスタイルでの試みを始めさせていただきます。定期の練習を聞いてその後楽員とティータイムをともに過ごしていただく練習聴講&懇親会という形に変えさせていただきます。
さて今日は明日の定期演奏会についてお話を聞いていただきますが、明日から始める新シリーズとして他府県のオーケストラを大阪に招きまして合同演奏による「二都物語」を始めます。
来年の4月には東京都交響楽団を招いて「アルプス交響曲」を、それから一部で公表されてしまいましたが、仙台から仙台フィルハーモニー交響楽団を招いての合同公演などがそのシリーズで予定されております。
アンサンブル金沢とは前回金沢での合同公演でしたが今まですでに3回一緒に演奏してきております。
今回はリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドンファン」「ティルオイレンシュピーゲル」に、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」というプログラムで、コンサート前半はまず「ジュピター」、弦楽器はアンサンブル金沢とセンチュリーが半々でコンサートマスターは金沢側が、また管楽器はすべてアンサンブル金沢側が受け持ちます。
休憩後のリヒャルトシュトラウス二曲は弦楽器は同様に合同ですが、コンサートマスターをセンチュリーのナンドール・セデルケニが受け持ちまして、プルトの表側に全てセンチュリーメンバーが座ります。 管楽器はセンチュリーが1番2番を受け持ちその他をアンサンブル金沢側が担当します。
ちなみに弦楽器の編成はお互いにエキストラを入れずに演奏しようということで、ヴァイオリンから18・14・10・10・6という変則18型の編成になります。
一番最後の曲「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」での編成が一番大きなものになるのですが、その時で90人の大編成。
という段取りなのですが合同演奏会でどうしてリヒャルト・シュトラウスなのかという辺りから小泉さんにお話を伺いたいと思います。 よろしくお願いします。
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小泉:皆さんこんばんは。このサロンでのお話は確か二回目だと思います。
普段はステージからなので皆さんのお顔がよく見えないのに、今日はこうして皆さんのお顔を拝見しながらのお話ということで根が恥ずかしがり屋なものでうまく話ができますかどうか・・・。
アンサンブル金沢は30名ちょっとの小さなオーケストラで私も何度も指揮させてもらっています。 こちらの大阪センチュリーも55名弱の中くらいのオーケストラなので、どちらもその小さな編成故プログラミングが制限を受けてしまいます。小さなオーケストラではその編成ゆえにどうしても少ないレパートリーの中でしか曲目を選べないということになります。
明日のプログラムのような3管編成、オーボエやフルートもそれぞれ3人ずつ。弦楽器もヴァイオリンが18人、16人、ヴィオラ14人、チェロ12人、コントラバスが8人と指定されているような曲は普段当然できないわけです。
このように作曲家が編成の大きさを指定していて普段できない曲を、年に一回くらいはセンチュリーの編成を大きくして聞いていただきたいと思っています。
これはお客様にとってだけではなく、普段どうしても限られた曲ばかりを演奏することでマンネリになりがちなそれぞれのオケのプレイヤーにとっても刺激になるのです。
どうしてリヒャルト・シュトラウスかということですが,シュトラウスは非常に大きな編成のオーケストラを要求しています。
またオーケストラのどのパートにも十二分に鳴らし切ることを要求し、ヴァイオリニストでもあったシュトラウスは、弦楽器の演奏効果というものも熟知しています。管楽器にも同様に非常にソリスティックな難しいパッセージを書いている。
それだけ難易度が高いので演奏しがいがあり、また練習もたくさんとらなければいけません。
聞くところによるとどちらのオーケストラの皆さんも、もう随分前からほかの演奏会の傍らシュトラウスの楽譜をずっと練習していたとか・・・・(笑)
そういうことでお互いに普段できない曲で、かつ難易度が高い曲にチャレンジするためだと言えるでしょうか。
もちろん実現のためには旅費宿泊費を負担してアンサンブル金沢に大阪に来てもらわないといけませんから、お金もかかる企画なのですが今回はアフィニス財団から助成を得て実現しています。
また来年には東京から私が何年も指揮者を務めている東京都交響楽団を同様に招き同じくシュトラウスの交響詩の名作「アルプス交響曲」を合同で演奏することを決めております。
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事務局(三宅):シュトラウスにとって交響詩というジャンルでの第一作は、「マクベス」の方が実は最初に仕上がっていたらしいのですが世に発表されたのは「ドンファン」が最初らしいですね。
ご存じでしょうがリヒャルト・シュトラウスの父親はホルン吹きでしたのでホルン協奏曲は二曲書いています。
皆さんのお手元にドンファンの冒頭部分のスコアをお配りしました。
私は元ホルン吹きでしたのでどうしてもホルンに気がいくのですがご覧いただけますでしょうか。先ほどマエストロがおっしゃっておられましたがそれぞれのパートが非常に難しいパッセージを演奏します。各パートのプレーヤーが優秀であればあるほどその妙技が際だつように書かれています。
「ドンファン」の最初の部分のこの16分音符の休符に続く一連のパッセージがただ形がわからなくて「ゴソゴソゴソッ!」というように始まるオーケストラもあれば、見事に小気味よく整ってきれいに決まるオーケストラもあるわけです。
もちろん明日の演奏会は期待していただいて結構かと思います。
またお配りしたもう一枚のスコアをご覧いただくと「ティル」の冒頭部分がでていますがこの部分のホルンの独奏は八分の六拍子なのですが休符が頭にあり、ただ漫然と聞いていると小節の頭の拍が分かりづらいトリッキーな書き方がなされております。
恥ずかしいんですが、私がブラスバンド吹いていました高校生の頃LPで聞いたときこの場所の小節の区分を勘違いして理解しておりました。
このように「ティル」は他の部分でも頻繁に現れるトリッキーな書き方のせいで非常にリズムがとりにくい曲ですね。
さて小泉氏はカラヤンの元で勉強された当時カラヤンーベルリンフィルの組み合わせでのコンサートや練習を随分お聞きになられたんでしょうね?LPなどでもこの組み合わせでシュトラウスの交響詩の名盤がたくさんありますしそういうものもお聞きになられたんでしょうか?
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小泉:民音指揮者コンクールに芸大2年の時に優勝して賞金(奨学金)と航空券を頂き、芸大4年の時中退してベルリン音楽大学に留学しました。
渡独する前は小澤征爾さんが指揮していた分裂前の日フィルの指揮研究員をしていたものですから、小沢さんのリハーサルや客演で来ていた外国からの指揮者のリハーサルに立ち会って様々な音楽を勉強させてもらいました。
ですからベルリンでもただ大学で勉強し後はコンサートで演奏会を聞くというような勉強だけではなくて、名指揮者たちがオーケストラのリハーサル現場で一体どういう練習をしているのかということが一番知りたかったのです。
大先輩の近衛秀麿さんという大指揮者が、「一旦ドイツでオーケストラのリハーサルを聞くと、これはもう日本の現場とは全然違うことをしているんだということがよく分かる」と仰ってましたがやはりむこうのオーケストラには歴史の重みというものがあります。
ベルリンフィルの場合だとそれこそニキシュやフルトヴェングラーの指示が書き込まれた楽譜を使っているわけですよ。
そういうものを直接勉強したかったので留学後一年目にカラヤンコンクールにチャレンジし、優勝できたおかげでカラヤンさんのリハーサルを聞くことができるようになりました。
当時の巨匠たちカール・べームやオイゲン・ヨッフム、中堅になりつつあった小沢さん、ムーティさん、マゼールさん、メータさんらもベルリンに来ていましたから、そういう人たちの練習も聞かせてもらいました。
当時の私は指揮者がリハーサルで一体どういう事を言うのかに興味もありましたが、どちらかというと楽員がその時どう演奏するのかということの方がさらに興味深かったですね。
当時サンフランシスコ響で監督をしていた小沢さんもベルリンがどう弾くのかということを勉強してそれをアメリカでやってみているんだと仰ってました。
たとえば弦楽器の弓使い(ボーイング)一つとってみても、ベルリンフィルやウィーンフィルのボーイングを見て勉強するとそのアイディアが大変勉強になるんです。
ボーイングによって出てくる音色やニュアンスが変わってきます。 当時のベルリンのコンサートスターだったシュヴァルベさんに、今度日本で演奏するんだけれどもアドヴァイス下さいとお願いしたら僕のベートヴェンのスコアに空で見事にボーイングを書き込んでくださいました。
当時もちろんシュトラウスも随分聴きましたが私にとって一番の宝物になっているのはドイツ音楽の根元ともいうべきバッハ・ベートーヴェン・ブラームスという作曲家たちを、どう演奏しなければならないのか。
どういうふうに指揮しなければならないのか。といったことを現場で勉強できたことですね。
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事務局(三宅):ところで小泉さんはベルリンフィルでシュトラウスを演奏なさったことはありますか?
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小泉:ええ、30代の頃にドンファンを指揮したことがあります。
その時のことです。冒頭にも出てくるメインテーマで最初が一六分休符から始まるあのテーマですが、一つ一つの音を正確に弾かなければならないのは当然ですが、もっと大事なことはその勢いなんですよね。
こんな感じに・・・・(♪ンタタタタカタカ・・・・・♪♪♪)
そのテーマがある時はフォルテで勇ましく、ある時はピアノで軽やかに・・と何回も出てきます。ベルリンフィルを振ったときチェロパートが弱音で軽やかに弾かなければならないところで、彼らがどうもズズズズーっと引きずったように弾いていて良く合わなかったのです。私は一つ一つをもっと正確に弾いてほしいとそこを練習したんです。
演奏会ではもちろん彼らは実に正確に弾いてくれたのですが、当時のヴィオラ首席の土屋さんが後で教えてくれたのです。
「小泉、おまえがあんなこと言うものだからみんなで裏に集まってあそこの練習していたぞっ」ってね。
世界最高のベルリンフィルのメンバーがもちろんプライドもあるでしょうが私のような若い指揮者に指摘されたにもかかわらず、皆で集まって練習してくれた訳で嬉しい話でしたが、
若気の至りと言いますかそういうことを言ってしまった訳です。
今回の練習ではセンチュリーや金沢のメンバーも曲の難しさは皆承知して十分練習してくれているので難しいところももちろん問題なく巧くいきました。
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事務局(三宅):そうですね、こんな事と言っていいかどうかわかりませんが、一昨日までオーケストラは休みだったのですが、ホルンパートの四人全員が休日に練習場に出てきてパート練習しているのを初めて見ました。それほどリヒャルト・シュトラウスというのはホルンパートにとっても大変な曲だと言うことですね。
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小泉:もちろんオーケストラは他の演奏会の練習でもきちんとしているのですけれど、今回はシュトラウスで特に難しい曲でしたからね。
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事務局(三宅):でもさすがベルリンフィルですね。日本で若手の指揮者がそんな練習をしたとしたらいじめられて終わってしまいますけどね。
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小泉:正しいことを言っていればそんなことはないでしょうけれど・・・(笑)
もちろんヨーロッパでは正しいことはこうだとストレートに言えるところが、日本だとあまり直接的に言うと角が立つっていうことはあるかもしれません。
特に言うタイミングだとかその言い方にも気を遣うべきものかもしれませんね。
指揮者というのはそちらへの気遣いの方が大変です。それ以上に大切だと私が思っていることは指揮者自身がまず感動していること、そういう雰囲気を作れること、そしてそれを楽員にも伝えること。もちろんそれをきちんと伝えるために当然棒は振れないとだめですよ。
それに加えることに人を動かせる人間性かな? それがあればオーケストラはもう絶対ついてきます。
得てしてそういうことは若いうちにはなかなかうまくできないものです。私もいつまでも若いつもりでおりましたけれどももう50を過ぎていますし、どこかのプログラムを見るともう「ベテラン」と書かれていました。
自分自身はまだまだだという気がしているんですけれどね。
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事務局(三宅):そうですね大阪では92歳までかくしゃくと指揮活動なさっておられた某有名指揮者もおられましたしね(笑)
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小泉:それから較べれば子供みたいなものかもしれません。そうです、 いつまでも勉強だということですね。
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事務局(三宅):ところで今回のジュピターですけれども、どうなんでしょう。
このような曲はセンチュリー単独でも演奏できるのですけれども、二つのオーケストラからそれぞれ半分づつのメンバーが合同での練習だったわけですけれども、やりにくさのようなものはなかったでしょうか?
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小泉:ええ、最初は少し堅くなるのではという心配もしていたのですが特になかったように思います。やりやすい雰囲気を作り、気持ちをリラックスさせながら練習していける状況を作る事が指揮者の役目だと考えています。
昨日練習終了後にアンサンブル金沢の歓迎パーティーがありまして、その席で「この演奏会はうまくいくでしょう」と言いましたが、今日の練習でもさらにうまく仕上がりつつありますからきっといい演奏会になりますよ。
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事務局(三宅):私は練習を全部聞いておりましたし昨日のパーティーにも出ておりましたが、双方の楽員からそれぞれが受けた刺激とこの合同演奏会への期待感を十二分に感じることができました。また自主パート練習の話もいたしましたが積極性も十分に感じられて非常に嬉しく思っております。
明日の演奏会は本当に適性の良いアンサンブルの期待できるすばらしい演奏会になると思っております。大阪では先日来関西フィルさんが「英雄の生涯」大阪フィルが秋山さんで「ツァラストラ」とシュトラウスが続いておりますので、センチュリーが一連のシュトラウスの最後に有終の美を飾れるよう願っています。
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小泉:いやはや事務局からプレッシャーをかけられましたがそれに答えるのはなかなかむつかしいですよね(笑)。ティルの方はわかりやすい物語に沿った内容ですから良いのです
が「ドンファン」はレーナウという人が書いた長大な詩をを元に書かれた作品ですからただ弾いた、吹いただけではだめでその内容をどこまで表現できるかが問題になってきますからね・・・。
ですから演奏するときもこの二曲を続けて弾くのは指揮者にとってもプレーヤーにとっても体力的にも精神的にも大変です。ドンファンはその構成が大切になってきますからその出来はほとんど指揮者の腕にかかっていると言っても良いでしょう。
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事務局(三宅):ええ、よろしくお願いします。今回はアンサンブルとの合同を実現させるためにアフィニス財団から補助いただいていますし、色々準備に奔走した事務方としても頑張っていただかないとね(笑)
来年に至りましては「アルプス交響曲」でさらに人数の多い東京都交響楽団を東京から招きますから経費はさらにかかります。例えばホルンセクションなどはバンダといいましてステージ以外で演奏する人たちが12人!ステージ上に8人必要ですから合計20人ものホルニストが必要なのです。両方のメンバーを合わせても12人ですからホルンだけで8人ものエキストラを集めなければなりません。
そういうわけでこれからまだスポンサーを募りに奔走しなければなりません。幸いにも同じくアフィニス財団からの補助は決定しておりますが、東京のオーケストラの場合、オペラを演奏会形式で上演する場合など単発で料金を高く設定するということを行っておりまして、この定期演奏会に関しましてだけは入場料を若干高くさせていただきます。
また来年の4月からは年間の定期会員の方に関しては料金据え置きですがその他の方に関しましては若干値上げさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
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小泉:そうです、ソリストによってはギャラがものすごく高い場合もあるわけで、収支を考えると、そうせざるを得ませんよ。お客様に良いソリストを聴いてもらいたい時などチケットが高くなることもやむを得ないこともあります。
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事務局(三宅):今年の場合10月のダンタイソンも期待できるソリストですね。
この10月に関しましてはマエストロが京都出身だということもありますし、22日の大阪シンフォニーでの定期演奏会に続いて翌23日は京都コンサートホールでも同じプログラムの演奏会を行います。
指揮者陣が変わった時という時は企画も新しいものを立てやすくなる時でもあります。これからも引き続いてこういう企画も続けていきたいと思っております。
まだ少し時間がございますので皆さん小泉さんにお聞きしたいことがありましたらどうぞなんなりとご質問なさってください。
事務局に対する苦情でも結構ですのでどうぞおっしゃって下さい(笑)

この後定期会員の皆様からの活発なご質問が続きましたがここでは割愛させていただきます。
Interview:三宅楽団長
Photo&文責:kaz. |
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