今回の定期演奏会は当団トロンボーン首席の近藤孝司さんがソリスト。
センチュリー練習場にて4月15日練習後に、
楽器のお話等色々お聞きしました。


近藤さんとアルトトロンボーン

-CONTENTS-
トロンボーンを始めたきっかけは?
アルトトロンボーンって?
アルトの代わりにテナーで吹く?
難易度最高の名曲
私のソプラノ・アルト・テナー3点コレクション

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インタビュアー(以後I)I: そういえば近藤さんは我が楽員会サイトの「メンバー紹介」コーナーではプロフィールが出ていませんね(笑)
[トロンボーンを始めたきっかけは]
近藤(以降K):そうですね、いつ楽器を始めたのかとか何が楽器を始めるきっかけになったのかなど他の楽員のみなさん格調高い内容ですからね。

僕がトロンボーンを始めるきっかけはクレージーキャッツが好きだったことなんです(笑)
谷啓さんがトロンボーン吹いていたでしょ。
I:それは小学校時代ですか?
K:そうですね。ピアノも何もやったこと無かったんだけど
中学校のブラスバンドに入ったときに初めてトロンボーンに出会った訳ですね。

実は私先月東京でその谷啓さんのステージでいっしょにトークしたんですよ。
I:えっ トークショーに近藤さんが出演したわけ?
K:そうです、トロンボーン協会のフェスティバルで谷啓さんのゲストステージが行われていて
そこで「谷啓さんにあこがれてプロのトロンボーン奏者になった人がいます」と紹介されステージに呼び出されて彼と話したという訳なのです。
I:トロンボーン協会の集まりというとそこで彼もトロンボーンを吹いたりしたわけでしょうね。
K:ええ、彼は芸達者ですからいろんな楽器を吹いていましたけれど
最後にフェスティバルの参加者全員でトロンボーンを一緒に演奏したとき
なんと私は彼の横で一緒に吹いたんです。
それはもう私にとっては感動もので、夢の協演でした。

お年ももう72才ですけれどまだまだちゃんとトロンボーン吹けるしジャズも演奏されてました。

そもそも谷啓さんってトロンボーンという楽器を日本で最初にメジャーにした人ですよね
I:そういえばクレージーキャッツのなかで彼がトロンボーンのソロしていた記憶はありますね。
K:でしょ! 
今でもトロンボーンってどんな楽器ですかって聞かれたとき、おじさんおばさんだったらクレージーキャッツの谷啓さんが吹いていたあの楽器!
と言えばすぐわかってもらえますから(笑)

ああっあれか!てね。
I:ちょっと待ってください。そうして中学校でトロンボーンを始めて・・・・・
K:いえいえそうじゃないんです。
トロンボーンという楽器はスライドを伸び縮みさせて音程を取り、
一番腕を伸ばす7ポジションまでポジションがあるのですが中学校一年の僕は身長が150センチなかったんです。
そう!その第7ポジションに手が届かない!

だから大きくなるまでは他の楽器をやれっていうことでユーフォニウムを吹かされていたんですよ。
体さえ大きくなればトロンボーンを吹かせてもらえるということだったんですけれど。

私は中学3年になってやっとトロンボーンを吹くことができるようになりました。
そのときようやく160センチになれたんだけどそれから今に至るまでそのまま!!!

普通オーケストラではテナートロンボーンがよく使われるんですけれどそれより小ぶりの短い物が今回の演奏会で使用するアルトトロンボーンです。
私が中学校に入ったときこの楽器がそこにあったならすぐにでも吹けたのになぁと思います。
I:普通、学校のブラスバンドにはないものなのですか?
K:まずないです。
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[アルトトロンボーンって]
I:オーケストラで「運命」演奏する時、アルトを近藤さん使ってませんか?
K:ドイツ浪漫派までの曲では一番トロンボーンは絶対この楽器です。
だからベートーヴェン、ブラームス、シューマンくらいまではアルトトロンボーンを使っています。

実は今回(インタビュアー注:4月17日の金聖響浪漫派シリーズの演奏会のことです、このインタビューは金さんの演奏会より前に行いました)ブルックナーの交響曲第4番でこのアルトトロンボーンを使用します。

スコアにもちゃんとアルトトロンボーンと指定されているのですが普通何処のオーケストラ、日本でもアメリカでもドイツのオケでもテナートロンボーンで演奏するんですよ。
これは他の曲でも同じで、アルトと指定されていてもテナーを使いますね。
I:よくわからないんですけれどもアルトとテナーは全然音が違いますよね。
テナートロンボーンとアルトトロンボーン(右)
K:ええ、アルトは女声ですけれどもテナーは男声ですよね。同じようにトロンボーンもその「音色」が違うんです。
アルトは女性の声のような音色。テナーは男性の声のような音色なのです。
楽器の音色というものにこだわるとオリジナル通りの楽器の音色を使いたくなるものです。

例えば合唱と一緒に演奏する宗教曲、レクイエムだとかミサだとかですね。
そういう曲だとトロンボーンがそれぞれのパート(ソプラノ・アルト・テナー・
バス)に楽器が一つずつ対応して一緒のパートを吹くことが良くあります。

だからアルトトロンボーンで吹く旋律は後ろで歌っている女性のアルトと全く同じ事吹くわけです。
テナーはその後ろの男性パート・テナーと一緒歌う。

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[アルトの代わりにテナーを吹く?]
I:じゃあどうして現在アメリカや日本のオーケストラの一番トロンボーン奏者はアルトトロンボーンを使わないでテナートロンボーンを吹くんでしょうか?

古典からロマン派・現代に到るまでテナーを使うのが一般的なのですよね。
K:現在の技術を持ってするとアルトトロンボーンの音域はテナーで簡単に吹けてしまうんです。
オーケストラの中で曲によってテナーとアルトを持ち替えるとするとマウスピース(口に当たる部分)も大きさが変わるわけで、その二つを吹き分けるという難しさが出てくるのでそれを避けるためですね。

「運命」や「第九」ももちろんテナーで吹けますし私もテナーで吹いたことありますけれど
やはりその作曲家がイメージしたオリジナルのアルトトロンボーンの音色というものを大切にするためにはアルトで吹かないといけないというこだわりで私はいつもアルトを使用しています。
でもこれは聞いている普通のお客様にわかることではないですよねぇ。

それに私は背が低いから小さなアルトトロンボーン吹いても
テナートロンボーンに見えてしまうから余計にわからない・・・(笑)

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[難易度最高の名曲]
I:そんなことないですけれど・・・・
今回のいずみ定期で演奏するL.モーツァルトの曲はもちろんアルトトロンボーンの為に書かれたものなのですよね?
K:ええ もちろん。
この曲はL.モーツァルトが宮廷楽団のトロンボーン奏者の為に書いたわけですが
トロンボーンのために書かれた曲としてその美しさはこの世で一位二位を争う曲です。
と同時にその難しさも同等に一位二位を争うものですね。
I:普通古典派の協奏曲というとそこまで難易度の高い曲は少ないのではないですか?
K:この曲はやったことのある人でないとわからない難しさがあるのです。
世界トッププレーヤーが演奏するこの曲をライブで聴いたことありますがやはり大変そうでしたね。
I:具体的に言うとどういう難しさなのですか?
K:アルトのために書かれてはいるのですが非常な高音域ばかりを使っているんです。
聴いている方にとってはそれがその楽器にとってどれだけ高い音なのかっていうのはわかりませんからね。

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I:ところで今回のこの曲のプログラミングは一体どういう所から出来上がったのでしょうね?
K:僕もわかりませんが事務局から一年程前にL.モーツァルトのこの曲と「おもち
ゃ」、それとハイドンのトランペット協奏曲と「軍隊」に決まったのだけどアルトトロンボーンの独奏を君に演奏してもらいたいとの打診があったんです。

とてもやりたいけれどこの難曲を演奏するのは勇気がいる。一瞬即答できずに迷ってしまいました。
それ程に難しい曲だと言うことです。
K:ところでこのレオポルドの協奏曲はオリジナルは協奏曲スタイルで書かれたものではなくて9つの楽章からなるセレナーデなのです。
その中の第6・第7・第8楽章目の三曲がトロンボーン独奏のために書かれた曲でその三曲を独立させて協奏曲として演奏するわけです。

それからこの中の第4・第5楽章はレオポルド・モーツァルトのトランペット協奏曲として演奏されているんです。
また第3楽章はヴォルフガング・モーツァルトのヴァイオリンソナタ第1番の第3楽章と全く同じ曲なんです。
I:えっなんだかよく分かりませんがそうするとこのセレナーデは誰か後世の人が組み合わて作ったものじゃないんでしょうかね?
K:そうですね。ヴォルフガング自身がこのセレナーデのスタイルにまとめたという話もあります。
セレナーデとしてまとめて録音されたものもありますけれどそれぞれトロンボーン協奏曲、トランペット協奏曲などとして単独に録音されることの方が多いのです。この話は当日のプログラムの解説に載りますね、、、多分(笑)
I:そうかもしれませんね。ところで今回近藤さんが使われる楽器について伺いたいのですが・・・
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[私のソプラノ・アルト・テナー三点コレクション]
K:今回使う楽器は約百年前に作られたドイツのクルスペ(Krusupe)という楽器を使います。
ヴァイオリンで言えばもうストラディバリウスのような名器です。
これはベルリンフィルやドレスデンシュターツカペレ、ウィーンフィルでも現在も使用されている楽器なのです。
とはいえ金属ですから金属疲労が出ていてそうとう吹きにくくなってしまっています。

テナー(下)とアルト(上)

前から見たテナー(左)とアルト(右)
K:それから同じクルスペのテナートロンボーンも持っています。そしてさらに世界でたった一本しかない同じく百年前のクルスペのソプラノトロンボーンも持っています。
        

3本セットのクルスペ(上からソプラノ・アルト・テナー)
I:これらの楽器は近藤さんの個人のコレクションですか??

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K:はい、そうです。
ソプラノトロンボーンという楽器が先に説明したように歌のソプラノに対応してあるはずなのにどうしてないんだろう?と長年疑問に思っていました。
I:ソプラノトロンボーンというとひょっとしてもうその音域はトランペットに重なるのではないですか?
K:そうなんです。トロンボーンで吹かなくてもコルネットやツィンクという楽器で演奏すれば済むことだということで
ソプラノトロンボーンは消えてしまった訳なのです。バッハでもオリジナルはソプラノトロンボーンなのに後に
ツィンクに書きかえられている楽譜があります。
私は前も言いましたけれどそれぞれの楽器の音色にこだわりを持っていましたから

以前はヤマハにオーダーしてソプラノトロンボーンを作ってもらったりしていたのですが
最近世界唯一のこのクルスペのソプラノトロンボーンをようやく手に入れたというわけです。
I:近藤さんは楽器を随分コレクションされているみたいですけれども
何本くらい集めておられるんですか?
朝顔の部分に彫られたクルスペの刻印
K:そんなにたくさん持っていませんよ、 今7本ですか。
音色にこだわっていますからどうしてもヴィンテージ物になってしまいますね。

弦楽器でもそうでしょ、オールド楽器は音色が違う!
I:今回の演奏会でも近藤さんのその音色へのこだわりを聞かせてもらえるんですね。
名器クルスペのスライド管の先端には
蛇をかたどった精緻な細工が施されています。
K:そうですね、一般的にトロンボーンというと力強い男性的な「ザーン!!」と
来るイメージが強いと思いますが、
このアルトトロンボーンはそうではなく、女性的なイメージの音色を聞いて頂けたらと思っています。
I:近藤さんのひと味違うアルトトロンボーンの甘い音色を満喫できそうで楽しみになってきました。それでは定期まで更に腕に磨きをかけて名演をお願いいたします。
今日はお忙しいところ時間をいただきありがとうございました。

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interviewer:kaz.
photo:yasunaga.