インタビューさせていただいたのは練習2日目の7月5日。
この4月に就任したばかりの出野徹之、センチュリー交響楽団常務理事兼新事務局長に
インタビュアーになっていただき
練習終了後に指揮者室におじゃましてお話しを聞かせていただきました


インタビュアー・出野事務局長(以後Q):マエストロ・セガルはこのオーケストラの創設時からかかわって来られました。
設立から既に13年経ちましたが、今、現在のセンチュリーをお聴きになって、マエストロの印象はいかがでしょうか?
 
マエストロ・セガル(以後A):私は、センチュリー来ると久しぶりに来たという感じが全くしないのです。あたかも先週も来ていたような感じがします

リハーサルを始めると、お互い すぐに理解しあえるのです。
たぶん設立当時からこのオーケストラを指揮しているので何というか・・・特別な理解力というようなものがわれわれの間に 存在するのでしょうね。
Q:それで、設立当初からすると、充分に成長したといえるでしょうか?
人間がということだけではなく、プレーヤーとしても、という事ですが。
 
A:そうですね。プレーヤー同士がお互いに、より良くなろうとし、オーケストラのまとまりも良くなっていると思います。 音もより多彩な音色になってきました。
今回のチャイコフスキーの「ハムレット」の 金管・パーカッションセクションなどは、センチュリの編成からすると、ど
うしても大きくならざるを得ないのですが、今回の定期はこじんまりした、「いずみホールで演奏するので、大音響はふさわ
しくないと考え、あまり鋭いアタックはつけずにお願いしました。
 
Q:設立当初のこのオーケストラに対する特別なまたはエキサイトするような想い出等、ありますか?
   
英語に堪能な出野新事務局長
A:ええ、もちろんありますよ。
できたばかりのオーケストラを指導していく機会を得られる指揮者というのは、ほとんどいません。経験とは程遠いものです。通常は、既に伝統のあるオーケストラを指導していくことになるのですが、その場合妥協というものが生じます。初めからオーケストラを創造していくことは、本当にエキサイトすることなのです。
メンバー全員のオーディションをして、その演奏を聴くのはエキサイトすることでもあり、またそれだけで個々の能力を判断することは 易しいことではありません。
1ヶ月かそこらで、オーケストラのメンバーを決定しなければならなかったのですからね。多少のミスをきいたとしてもです(笑)・・・
これは、そんなに問題ではありませんが。しかしながら、いくつか殊に木管セクションにおいて、非常に印象深い演奏が聴けました。私の選んだメンバーが、お互いにより良くなっているのにとても満足しています。
 
Q:今、センチュリーは公的なオーケストラからより民間的な方向へむかう岐路に立っていると 言えます。
より聴衆の皆さんに知ってもらうために今後われわれが成すべきことは、いったいなんだと思われますか?
A:そうですね、その問題は世界中の多くのオーケストラが直面していることです。私のアメリカのオーケストラも例外ではありません。

それは、2つの局面から考えることができるでしょう。
ひとつは、オーケストラの演奏を最もハイレベルな水準に保つこと、できる限りの最善の演奏を聴衆に聴かせることです。
もうひとつは、前に述べたこととはほとんどつながりがないのですが「マーケティング(需要)」と呼ばれるものです。
「マーケティング」には、それを専門とする人による多くの想像力・率先力を要します。それは音楽家の仕事ではありません。
これは、私が経験から得たことですが。プログラムの内容も関係してくるでしょうね。

私は、有名になるということが必ずしも必要とは考えていません。
ご質問の正しい回答が何か、というのは難しいことです・・本当に。何度も何度もあらゆる場所で演奏して分かることかもしれません。

最近ですが、聴衆を呼ぶプログラムという点で、私の2つの経験をお話しましょう。
まず最初に、ベートーヴェンの第5番(「運命」)をハンブルクで演奏しました。チケットは完売で、これはハーレムジーク(ハンブルグのコンサートホール)では大変めずらしいことだと言われました。
しかし、5番をプログラムにいれるとチケットは完売したのです。
また、アメリカではベートヴェンの第9番、これは当地では日本の12月のようにどこでも演奏される曲ではありません。
アメリカでこの曲を演奏するのは、本当にイヴェントと言えるのです。これも、2度チケットは完売しました。結局、このことは予想できなかったことです。

私が言いたいのは、マーケティングを担当する人間にも予想がつかないこともあるということです。また一方で、予想できるのは聴衆だと言えるでしょう。そう・・・これはコンプレックスですね。

またいつ演奏会をするのかということもチケットの売れ行きに大きく関わってきます。アメリカを例にとりますと、多くの観光客が押し寄せる冬のフロリダ、ご存知でしょうが、もしコンサートの日程が競馬(?)の時期と重なったりしたら大変です。
といったように、人の動向といったものに注意してコンサート開催の時期を見極めるのが、大変重要だということです。
私も、チャタクワの音楽祭の開催時期を決めるときは気をつけています。
この間も、ステージマネージャーの長谷川さんと話していたことですが、残念ながらセンチュリーは小編成のオーケストラで、レパートリーの中のいくつかの曲には多くのエキストラが不可欠で、その為の費用がかかってしまうということがあります。これが落とし穴なのです。
マーケティングには、投資が必要ですが、限られた予算内 で演奏会を実現しなければならないというジレンマがあります。マーケティング予算というのは、年ごとに計画できるものとはかぎりませんから。私が思うに、今後、年ごとに予算が削減されるというのであるなら、新たな対策が必要でしょうね。
 
Q:今回は、お忙しいスケジュールを縫ってセンチュリーの為だけに来日くださりありがとうございました。
アメリカで、良い夏をお過ごしくださいますように。
A:ありがとうございました。


センチュリーの指揮者控室の窓にはいつもセガル氏のご家族の写真が置いてあります。
(この写真をクリックすると大きくして御覧頂けます)





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ideno&joh. 2002.7.5.インタビュー