今回の高関さんのインタビューでは
普段あまり聞けないようなことから
定期演奏会の曲目まで
幅広くインタビューしてみました。


練習場、指揮者室にて

ーコンテンツー







インタビュアー(以下I)起床時間についてです。音楽家は夜型人間が多いようですが普段は何時頃起きられます か? また例えば本番の朝とか本番の翌朝はどうなんでしょうか。

高関氏(以下高):平日は午前6時、土日は7時です。基本的に家族と一緒に寝起きします。子ども たちは7時までに学校に行ってしまいますので、早く起きないと朝食を食べ損ないます。


I: 家でよく聴く音楽はどのような種類の音楽なのでしょうか。クラシック以外 も聞かれることありますでしょうか?

高:まず最初に、いわゆるBGMとして音楽を聴くということは私の場合考えられません。
テレビ・コマーシャルの後ろに流れている音楽でも注意して聴いてしまうようなことも良くあります。 クラシック以外で聴くのは、古いアルゼンチン・タンゴ(フアン・ダリエンソなど)と、やはり50年代までのジャズぐらいでしょうか。しかし実際はほとんどクラシックばかりです。CDでもLPでも古い録音を好んで聴きます。自作自演もむしろ探して聴くようにしています。私にとって、録音を聴く目的は、知らなかった作品を認識する事と、演奏の歴史を現場検証するためです。今でも毎年100枚近くCDが増えていきます。


I:指揮者の方は飛行機・列車等での移動を頻繁にかつ長時間なさる事が多いと 思いますがその移動の交通機関のなかでは何をなさっていますか?(眠ったりなさるのでしょうか?)

高:子供の頃は鉄道ファンでしたので、列車での移動は今でも苦になりません。留学時代、オスロでの演奏会のためにベルリンから当時の東ドイツ、バルト海のフェリー、スウェーデンを経由して24時間かけて列車で行ったことがあります(それも往復)。それはそれは素晴らしい旅行でした。東京−大阪間の新幹線では朝晩にかかわらず、必ず1時間は眠ります。残りの時間は本を読んだり、スコアを研究したり。車内で御弁当を食べることは最近はしなくなりました。一方、飛行機はあまり好きではありません。ヨーロッパ往復などの長いフライトでも、ほとんど眠ることができません。耳栓などを試したこともありますが、だめ でした。そんな時はアルコールの力を借りることもあります。ちなみに、飛行機の中でヴィデオは見ません。

I:一般的に指揮者は指揮棒を持っていてまたその素材などにこだわる方が多い ようにお見受けしますが 高関さんが指揮棒をもたないのはどうしてなのでしょう?

高:実際には指揮棒を持ったり持たなかったり、です。棒を使う最大の効果は右腕の「省エネ」です。しかし棒を持つと右手の表現力がパタッと落ちてしまうようにも感じるので、指揮する作品の性格に従って決めています。合唱作品や古典を演奏する時はほとんど使いません。反対にマーラー、リヒャルト・シュトラウスなど大編成のものや、変拍子の多い作品では棒を使った方が右手の動きがはっきりして、より効果的だと思います。
指揮棒の材質には特にこだわりません。できれば軽いものが良いですね。時々どこか に忘れてしまうので、その度に買いなおします。今使っているのは上野の東京文化会館の売店に置いてあったグラスファイバー製で、値段はたしか1200円でした。
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I:ワインにかなり精通されていると聞いていますが。

高:ただただ飲むのが好きなだけです。でも美味しいワインにあたると、とても幸せになります。

I:やはり白よりも赤がお好きですか。

高:どっちも大好きです。でも赤の方が多いですね。理由は赤の方がヴァラエティーに富
んでいると思うからです。

I:飲むときはお料理にも気を使われますか。

高:料理にまで気を使っていたら、お金が無くなってしまいます。でもワインと食事、双方を美味しくいただく最低限の努力はします。

I:お気に入りのワインと料理の組み合わせ、赤には○○、白には○○、ロゼには○○、を教えてください。

高:まず最初に、私はアメリカやオーストラリアのワインについてはまだ全然知識がないことを申し上げておきます。その上で鰻を例にとって見ましょう。関西風の蒲焼には、赤のフルボディーが良いですね。ぺネデス、リオハ(スペイン)やキャンティ(イタリア)など。関東風の蒸しが利いた場合は、ボルドー右岸(サンテミリオン、ポムロル)や軽いブルゴーニュ(ジュブレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニなど)の方が良く合うようです。白焼きに黒コショウを振って、シャトヌフ・デュ・パプの赤(フランス、ローヌ川岸)と一緒にいただくのは私のお気に入りのひとつ。鰻からは離れますが、揚げ立てのてんぷらとシャンペン(冷やし過ぎない)も良いですよ。てっさ、てっちりにムルソー(ブルゴーニュ、白)も合うと思います(ただし美味しいポン酢に限る)。最後に、ワインには絶対に合わない食べ物があります。それは納豆です。
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I:今までで、一番美味しいワインをいただいたときのこと、(シチュエイション、銘柄など)
をお聞かせください。

高:最近では、家人の親友夫婦が遊びにきた時に、家で開けたピション・ラランド1958年
(原語ではChateau Pichon-Longueville Comtesse de Lalandeという長い名前、ボルドー、ポイヤック)が奇跡的に美味しかったです。いわゆる当たり年ではありません。数年前に神戸三宮の酒屋さんで見つけた瓶でした。

I:そのワインの味を高関さん流に「解説」して頂ければ幸いです!

高:栓を抜いた瞬間はカビの臭いと酢が鼻をつく感じ。ダメだったかと思いながらも30分ほど待って恐る恐るグラスに注いだら、レンガ色に近い赤でした。グラスに鼻を近づけたらシェリーに似た甘いかおりが最初に来ました。口に含むとジャムのような濃さ、しかし複雑に味がからまって、中から枯葉や革、それから煎りの利いたコーヒーのようなかおりが出てきたような覚えがあります。酸味はすでに押さえられていてバランスは良かったですね。いずれにしても普段飲んでいるワインとはまったくの別物でした。

I:ウィスキーにも(シングルモルト?)興味がおありとも聞きましたが、お酒にまつわるおかしな(素敵な)エピソードがあったら是非聞かせてください。

高:私はスコッチのシングル・モルト以外のものをウィスキーと呼びたくありません。ワインを楽しみを知る前は、シングル・モルト・ウィスキーを探しては飲んでいました。100を越える銘柄(=蒸留所)のうち70ぐらいまでは飲み比べたと思います。私のお気に入りは、Laphroaig, Lagavulin, Talisker, Ardbeg, HighlandPark
といったところでしょうか。
酒についての思い出といえば、群響の海外公演でピルゼン(チェコ)を訪ねた時、本場のピルスナー・ビールを工場直結のバーで飲んだときの味の素晴らしかったこと。
以後、あれよりうまいビールに出会ったことはありません。
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I:それでは楽曲についてお伺いします。今回はどんなお考えでこれらの曲目を選択されたのですか。

高:まずシベリウス、ストラヴィンスキー共に20世紀を代表する作曲家ですね。
21世紀になっても二人の作品は演奏されていくでしょう。
しかし各々が歩んだ道は両極端と言っても良いかもしれません。
シベリウスが故郷のフィンランドにじっと留まり、自分の信じた道をひたすら歩んで行きました。それに対して、ストラヴィンスキーは時代の変化に翻弄されつつ、活動の拠点を転々と変えながら、作曲のスタイルもどんどん変えていきました。
その違いに興味を持ち、二人の作品を並列して見たいと思ったのです。
「タピオラ」ですが、高校時代に友人に薦められて買ったシベリウスのヴァイオリン協奏曲のLPの余白に「タピオラ」が入っていたんですね。
その演奏がとても気に入って、以来いつか指揮してみたいと思っていました。それが今回実現します。ちなみにこのLPはタウノ・ハンニカイネン指揮ロンドン交響楽団による演奏です。
シベリウスは89歳まで長生きしたにもかかわらず、生涯の後半にあたる30年間はまったく作品を発表しませんでした。その中で完成した実質的には最後の作品といえるこの曲は、テーマも構成も簡素なのですが、異常に研ぎ澄まされた響きと独特の雰囲気があります。以前演奏した第4交響曲と共にシベリウスの最高傑作と思っています。

一方皆さんよくご存知のヴァイオリン協奏曲は初期に属する作品で、自由奔放な作風 と言っても良いでしょう。ひとりの作曲家の両極に立つ作品を並べて聴いていただくのも一興ではないでしょうか。ストラヴィンスキーは、これも皆さんご存知の通り、バレエのために作曲された作品の多い作曲家です。そんな中で「3楽章の交響曲」は、いわゆる絶対音楽として書かれたものです。作曲家がアメリカに移住してからの作品ですが、ニューヨーク・フィルハーモニックのために書かれた「3楽章」は特に充実した作品です。この作品全体のテーマになっている長3度と短3度の同居は、明らかにブラームスの第3交響曲の冒頭のモティーフ(F-A-F, F-As-F)に由来するものです。このブラームスのモティーフを全楽章にわたって効果的に使ってニューヨークという街の巨大なエネルギー、そびえたつ摩天楼とその下の近代都市に住む人々の錯綜した気持、個々の人間の小ささ、時には無機的にさえ見えるこの街独特の雰囲気を見事に表現していると私は感じているのですが。
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I:「タピオラ」「三楽章の交響曲」(できればコンチェルトも)をそれぞれ ワインにたとえて、イメージを伝えていただけますか。(^−^)

高:残念ながら、2曲ともワインに例えるのは難しいようですね。「タピオラ」をお酒で表現するとしたら、フィンランドで造られるその名も「フィンランディア」というウォッカがあります。その強い方(アルコール50%)をギンギンに冷やして(現地だったら窓の外の雪に瓶を30分ぐらい突っ込んでおけば良い)、やはりフィンランド製の重いカットグラスに注いで一気に飲み干す。グラスも窓の外で冷やしておきましょう。おつまみはニシンの酢漬に限ります。ストラヴィンスキーはやはりバーボン(ワイルド・ターキー)の炭酸割りでしょうか。

I:よく「車の趣味は女性の趣味に似ている」と言われますが、 ワインの趣味(あるいはアルコール)もそうだと思われますか??

高:私は運転しないので、車について語る資格はありません。女性の趣味については、口 が裂けても他人にはお話しません。お酒の趣味については人それぞれだとは思いますが、好みのお酒というのはその人の性格を何気なく表わしているように感じられます。やはりひとつの願望の成就ということになるのではないですか?

I:高関さんの髪型はいつからそんな風になさってるのでしょう? 私が知りうる限りでは、はじめから今と同じ髪型をなさってる・・・

高:私も自分で知る限りずっと同じ髪型です。中学の時は校則でもっと短髪でした。

I:では最後に、自分を動物に例えると何(^−^?

高:家では里に出てきてしまったクマといわれています。

I: 今回もお付き合いいただいてありがとうざいました。

高:どういたしまして。
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2002.11.11作成
interviewer:mari,chika,&yoko
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