
|
[12月定期演奏会について高関氏にインタビュー]
|
![]() |
|
センチュリーオーケストラハウス指揮者室にて
|
|
2001年12月3日午後5時から、13日の定期演奏会に向けてセンチュリー合唱団の練習のために来阪中の高関氏に、センチュリーオーケストラハウス指揮者室にてインタビュー。
インタビュアー:相蘇哲(ヴァイオリン)宮本謙二(ファゴット)奥田一夫(コントラバス) O:今日はお忙しい中インタビューのために時間をとっていただきありがとうございます。 T:ホームページはいつも見ていますよ(笑) O:ありがとうございます。早速ですが今回の定期演奏会のプログラムについてお話しを伺いたいと思います。 今回のプログラムのメインテーマは何でしょうか? T:はい、20世紀初頭大きな音楽の流れを形作った作曲家というとバルトーク、ストラヴィンスキー、シェーンベルグが挙げられると思いますがその中で今年が没後50年になるシェーンベルグにスポットを当ててみました。彼の「ワルシャワの生き残り」がメインになるでしょうか。 [生々しい描写の「ワルシャワの生き残り」] T:「ワルシャワ.....」は第二次世界大戦終結の直後、1947年に書かれた、語り手と男性合唱そしてオーケストラのための作品です。 スコアの最初に「このテキストは私が直接、または間接的に受けた報告に基づいている。」と書いてある通り、語りのテキストもシェーンベルク自身が書いています。 ユダヤ人収容所の囚人達がガス室に送られるまでの様子を凄惨なまでにリアルに描いた作品なのですが、それを彼自身が完成させた作曲技法「12音技法」を完璧に駆使して表現している素晴らしいものです。 初演は1947年ニューメキシコでアマチュアのオーケストラと合唱団がこの八分足らずのこの曲のために50回もリハーサルを行って演奏されたそうです。そのリアリティー溢れる表現と凄まじい内容のため、また大戦直後でまだまだ戦争の傷跡が生々しかった当時のことでもあり、演奏終了後あまりの衝撃に誰一人拍手が出来なかったそうです。 そこで改めてアンコール演奏され、初めて万雷の拍手で賞賛されたという曰く付きの名曲なのです。 A:この曲は亡くなったユダヤ人の方達への鎮魂という意味合いの曲なんでしょうね。 T:当時は収容所での出来事を記録した映像を現在のように見ることはまだなかったでしょうしテレビもまだありませんでした。ですからシェーンベルグは後世にこんな事があったんだって伝えるためにこの曲で音だけでどこまで書けるかということを追求したかったのかもしれませんね。 痩せたユダヤ人達の姿が目に浮かぶような骨と骨とがぶつかる音を弦楽器が、残忍なナチの監視人達を金管楽器が表現したりと実に見事に描写されています。これを十二音技法を用いて書いたということは凄いことだと思います。 [言葉が重要] O:この曲では語りが非常に重要な意味合いを持っていると思いますが・・・ T:はい。 シェーンベルクは1910年代に「グレの歌」の終わりの部分で、すでにこの「語り」の技法を試みています。音程は指定しないものの、抑揚の指示は綿密に行ったこの方法を「シュプレッヒ・シュティンメ」と名づけ、後の代表作「月に憑かれたピエロ」や「モーゼとアロン」で全面的に使い、重要な役割を果たします。 コロラトゥーラやベルカントのようにメロディーをつけて歌うより語りかける方がよりインパクトが強いというアイディアを持っていたんですね。 O:そういう意味で特にこの曲はその語りの意味が判らないと理解しづらいのではと心配するのですが今回は邦訳で演奏されるのですか? T:ええ、内容をよく判って頂いて聴いていただくために今回は2回演奏いたします。 A.M&O: えっ!二回演奏するんですか? T:はい、一回目はあまり良い訳とは言えませんが私の邦訳でお聞きいただきます。そうして内容を把握していただいてからもう一度今度はオリジナルの英語・ドイツ語の混ざった形の語りとヘブライ語の合唱のスタイルで演奏します。実は1975年小泉和裕さん指揮の新日本フィルハーモニーで行われたこの曲の演奏時にも二回演奏されています。 ただしこの時はまず原語上演、その後邦訳で上演という順番だったのですが私は逆にひとまず邦訳で意味を良くわかっていただいてから休憩を挟んでもう一回オリジナルを聴いていただくスタイルをとります。 今年6月に行われた武生国際音楽祭で桐朋オーケストラの演奏で私がこの順番で演奏しましたが、意味を良くわかっていただいた上であらためてオリジナルを聞いて頂けるのでこの方が良いと思っています。 O:プログラムに邦訳が載っているのなら休憩時間中にもう一度内容をおさらいして後半もう一度聴けば本当に良く理解できますね・・。なるほど良いアイディアだ。 今回の演奏会では語り手は日本語・英語・ドイツ語と三つの言葉を喋らないといけないわけですね、大変だ。どなたがやられるわけですか? T:今回は決まるのが遅くなってしまいチラシには載せられませんでしたけれども9月の定期の「スペインの時」で一番活躍した力持ちのダニールを歌って頂いたバスの米田哲二さんが語りをしてくださいます。 O:楽譜が読めないとダメですものね。 T:ええ、これは音楽家を・・歌い手さんを指定していますから。 O:最後の合唱はヘブライ語なんですよね。 T:はい。一応ヘブライ語の文法の本も買ったんですけれども難しいですね。それにほら、ヘブライ語は右から左に書くでしょ、だから楽譜には歌詞を書き込めないんです。楽譜は左から右へ進みますからね。 O:あっそうか、それで楽譜には変な綴りのローマ字が書いてあったんですか・・・ T:あれは発音記号なんです。ちょっとこれを見てください。合唱団の方が持って来られた歌詞の対訳なんですけれど・・・・ M:あれ!ヘブライ文字の下に書き添えられた日本語が右から左に書かれてますね。こりゃあワープロ打ちするの大変だ(笑) [反戦がテーマ] M:ところで今回のプログラムはこの曲もそうですがブラームスの「運命の歌」も当時行われていた普仏戦争に対して反戦をテーマに書かれた曲ですよね。この間のニューヨークのテロに始まる世界の動きの中で今回の定期演奏会では反戦をテーマにした二曲を演奏するわけですね。 T:あの事件の後、23日だったんですけど群響の定期でプログラムがブルックナーの「ミサ」だったんですよね。やっぱり犠牲者の方々に捧げて演奏しました。 一番最後の曲がドーナ・ノービス・パーチェム(われらに平和を与え給え)ですからそれを心を込めて演奏しますと言って演奏しました。 今回の「運命の歌」やシラーの観念に基づいて創られた「悲歌」などブラームスの合唱曲には非常に美しい曲が多いのにどういう訳か演奏される機会の少ないですね。 [生活のためにアレンジ?] O:さてプログラム最後のシェーンベルグ編曲の「ブラームスピアノ四重奏曲」ですがこれはシェーンベルグ後期の充実した時期に書かれていますよね。 普通こういうものを書くのは学生が勉強のために書くことが多いんじゃないでしょうか?どうして歳取ってからこの様なことをしたんでしょうね? T:生活のためでしょうね。アメリカへ亡命した直後、カリフォルニアに移った頃に書いていますから。他にもその頃弦楽オーケストラのためやブラスバンドのために編曲をたくさんしています。この曲はO.クレンペラーがロサンジェルス・フィルハーモニーで演奏する事を前提に書かれたようです。 ベルリン時代にもバッハのコラール・プレリュードなどをアレンジをしていますがこちらはオーケストラの編成がすごく大きいんですよね、例えばクラリネットが4本もいるとか。 シェーンベルグはブラームスが好きだったようで彼が書いた作曲技法の前文に作曲家についてエッセイを残していますが、バッハ・モーツァルト・ベートーベン・ブラームスの4人だけについてしか書かれていません。 また彼は自らチェロを弾き室内楽をよく演奏したのでこの曲のオリジナル「ブラームスのピアノ四重奏曲ト短調」もよく演奏していました。 彼は室内楽曲をオーケストラ用にアレンジするとき「原曲の寸法を変えない」「音を変えない」「和声を変えない」という課題を課し原曲に忠実にオーケストレーションしています。 また室内楽では楽器の持つ性能上の限界のせいでブラームスの意図したものが充分に活かせた演奏を聴いたことがない、とシェーンベルグ自身言っています。 例えば音の大きいピアノにかき消されてしまいがちな弦の持つ重要な動きをブラームスが望んでいたであろうバランスで聞こえるようにするとか、アレンジでそのブラームスの意図したものが十二分に表現できるように工夫しています。 M:ファゴットなどピアノの左手パートを吹かなければならない所など本当に難しいですよ。 O:コントラバスも随分幅広い音域をカバーせねばならずかなり難しいですね。 T:終楽章のジプシー風ロンドでは いろいろな打楽器やピッコロなども使用していますし、ジプシー風なクラリネットの使い方も出てきます。オリジナルがピアノと弦だけとは思えない随分ゴージャスな音楽が聴けますよ。 M:今回のプログラムは前半がシリアス、後半はゴージャスな音楽を楽しんで頂くという趣向な訳ですね。 [定期演奏会のプログラミング] T:今年はシェーンベルグが没後50年でしたから今年の2月の定期で彼の弦楽四重奏オーケストラバージョンを聴いていただき、また最後12月にこうしてシェーンベルグを持ってきたわけです。彼の作品は素晴らしいものが多いですからもっと演奏されても良いと思いますね。 O:定期のプログラムってどの様に決めていくんですか? T:もちろん自分一人で決められるものではありませんよ。編成・年間スケジュール・大きな流れ等の色々な要素を考えてたくさんのカード、曲目ですね・・・から出来ないものを消していくような消去法で曲を決めていくんです。結構楽しいですね。 今年はシェーンベルグが没後50年だったのでシェーンベルグを2月と12月に持ってきましたし、来年はジョン・ケージが没後10年生誕90年、その先の2003年はベルリオーズ生誕200年、2004年はドボルザーク没後100年・・・とテーマにできる作曲家は続きますから、どんな曲を取り上げられるかな?・・と組み合わせを考えていくのは楽しいものですね。 O,M & A:高関さんは今からセンチュリー合唱団の練習をなさるわけですが頑張ってきて下さい。 今日はお忙しい中どうもありがとうございました。 kaz. |
戻るときはウィンドウを閉じてください