1月定期練習2日目の1月25日。
練習終了後指揮者控室におじゃまして3月の定期演奏会の
「幻想交響曲」やブリテンのピアノ協奏曲についてお話しを聞かせていただきました。


下の見出しをクリックするとその話題に飛びます。

*幻想演奏に大編成は必須?
*今回の楽譜の出版社は?
*慣習的なテンポ
*パワフルなサウンドって?


インタビュアー(以後I):3月の定期演奏会についてお伺いしたいと思いますのでよろしくお願いします。
3月の定期はセンチュリー創立以来初めての試みと言っていい楽器編成の大きなオーケストラのために書かれた曲を取り上げますね?幻想交響曲とブリテンのピアノ協奏曲ですが、ブリテンの編成はどうだったんでしょうか?
高関氏(以後T):ブリテンはそんなに大きくなくて2管編成プラスアルファです。
[幻想演奏に大編成は必須?]
I:幻想交響曲の方は大きいんじゃないですか?
T:でも管楽器はファゴット4人以外は2管なんですよね。
オーボエは3楽章に外で吹く部分があるのでそれを三本目に数えれば三人ですけれど二人で出来ないことはないんですよ、・・・っていうのは2楽章の終わりの方で、オーボエ一人だけになっているんです。つまりもう一人は途中で消えて良いのです。

クラリネットもあれだけ大きな音出しているように見えますけれど実は二人。
I:チューバが二本入るということとティンパニを四人で叩くところの印象が強くて大編成の曲というイメージが強いんですよね。
T:トランペットとコルネットで4本いるのとファゴットが4本いるところ、打楽器に5人ハープが2人いるところだけが大きい編成だと言えますね。
それから弦楽器の人数ですけれども、最低限欲しいという人数を本当はベルリオーズが指定しているんです。
I:どうもベルリオーズの音楽というとその表現にしてもすごく誇張したり極端なまでの幅のダイナミクスなどを要求しているでしょ、そういうイメージから人数も極端に大編成が必要だという固定観念ができあがってしまっているんですよね。
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T:ええ、スコアの最初を見ると彼は実際大きな編成を要求しています、ファーストヴァイオリン15人、コントラバス9人という大人数をあげていましたから。でも当時のフランスとしては結構スモールサイズでやっていたらしんです。
I:ファースト・セカンドヴァイオリンが10,9というような少ない人数でも演奏していたようですね。
T:話は変わりますが今年はベルリオーズ生誕二百年なのでプログラムに取り上げたのです。
I:そういえば昨年の高関さんのインタビューの中で定期のプログラミングについてお伺いしたときその話出ていましたね。
T:今年はねベルリオーズ生誕二百年とプロコフィエフ没後50年に当たる年なんですよ。それでやはりセンチュリーとして一曲目にはまず「幻想」から取り上げましょうということになりました。それでこの曲は作曲が1829年、1830年が初演で、恐ろしいことにベートーヴェンの第九の初演からたった6年しか経ってないんです。
I:そう考えると編成もそんなに大きくなかったんでしょうか、それに恐ろしく革新的な曲だったわけですね。
T:そうです、非常に革新的だったと言えます。同時に当時の演奏スタイルというものを考えたとき、やはりその時代の音楽としては現在あまりにもロマンティックに演奏されすぎている気がするんです。
I:なるほど、あまりにロマンティックな奏法や解釈がオーソドクスというか一般的になってしまっているんですね。
ということは今回もやはり当時の奏法というものを考慮してアプローチをなさるわけですね?
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[今回の楽譜の出版社は?]
T:ええ、今回もベーレンライターの全集版で演奏します。
I:やはり違うところはあるんでしょうか?
T:ええ、違うところがあります。幻想交響曲のベーレンライター版は割と早い時期に出て1970年位だったかな?ベルリオーズ全集は現在まだ進行中で全曲は出ていませんけれども大事な作品はもうほとんど出てました。この一月に群響で去年出たばかりの全集版を使って「イタリアのハロルド」を演奏しました。
I:ということは今現在一般的に使われているスコアは誰かが手を入れたものだということですか?
T:ベルリオーズはフランスの作曲家ですけれど今までの古い全集を出したのはやはりブライトコップなんです。色んな人が手を入れたようです。特にワインガルトナーが手を入れていると思われます。
音も変えられていますよ。例えばコルネットのG管という楽器を指定されていたんですがそれが古い全集の時代にはG管のトランペットなんてないよっていうことでB♭管のトランペットに書き換えられたのです。
そうするとB♭管のトランペットというのはコルネットに較べると非常に音が立って聞こえてしまうなっていうことが起こるんです。
I:オクターブ上げ下げされたところが出てきたりしてるんでしょうね。
---閑話休題---
T:その楽器で出せる音域が違いますからね。それともっと問題なのはダイナミック(フォルテやピアノ)が結構勝手に編集されていることなんです。

ベルリオーズくらいの作曲家になりますと例えば弦楽器はピアノでも管楽器はフォルテが書いてあるとか、セカンドヴァイオリンはピアノで終わっているけどファーストヴァイオリンはフォルテで終わっている。なんていうことが頻繁にあるんですけれども、そういったものを全て同じレヴェルに書き換えてしまったんです。せっかくベルリオーズが意図したものが無視されてしまったわけです。

そういうところ、勝手に書き換えられたところが新全集では元に戻されているんです。
それが1967〜8年位から順に出版されてきているのです。
I:その新全集を普通に使っていてもおかしくないのに一般には未だ使われていないんですね、どうしてでしょう?
T:ええ、使われてないですね。今まではパート譜が出てくるのに時間がかかっていたんです。私は幻想交響曲の新版が出たときにすぐ買ったのですが1974年か75年でしたか・・、
当時桐朋の学生オーケストラで「幻想」を取り上げたとき、私はセカンドヴァイオリンを弾いていたんですけど、その時新全集はまだパート譜が出ていませんでした。
I:今はもう出ているんですか?今回はそれを使うんでしょうか?
T:今はブライトコップ版を買ってもベーレンライター版を買っても同じ楽譜でどちらも新全集版です。
幻想交響曲というと91年にN響の定期に出させてもらったことがあってその時初めて新全集版のパートを使ったんですけれど、それまでほとんどのオーケストラが新版を持っていなかった。
I:版が違うと楽器編成も違ってくるわけですよね。
T:さっきのコルネットの話ですけれどG管って書いてあると奏者の方で考えて色々な楽器を選ぶことができるんですよね。
それから先ほど申し上げましたが強弱やアーティキュレーションが全然違ってたり
音が違っているところがあります。
I:でもそれだと音の高さが違ってたり楽器が違ってたり 聞いていてすぐ違いが判りますね。
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[慣習的なテンポ]
T:そうですね。それとテンポもベートーヴェンのようにちゃんと指定があるにもかかわらずあんまり守られていないんです。
この曲のテンポはこれだよってきちんと書いてあるんですけれどね。一般的にアッチェレランドをどこからかけるかとかリタルダンドをどこまでするかとかは結構大事にされているんですが、曲の基本のテンポを逆に誰も深く考えないで演奏されていることが多いようです。実はしっかり書かれていてベートーヴェンと同じようにきちっとメトロノームで指定までされているんです。
I:それっていわゆるオーソドックスなテンポとは違うんですか?
T:かなり違います!
典型的な例は4楽章の「断頭台への行進」が書かれているテンポよりも普通とても速く演奏されているんです。
(歌う)♪♪タタ〜ンタッタ〜〜ン タッタラッタタッタッタタ〜〜ン♪♪
っていうのが普通でしょ?それがこれくらいなんです
(かなりゆっくり歌う)♪♪タタ〜ンタッタ〜〜ン タッタラッタタッタッタタ〜〜ン♪♪
それから5楽章の「魔女のロンド」の部分もそうです・・・これくらい・・・・
I:なるほどそんなに遅いんですか・・・でもそうするとあの変則的なアクセントや極端なダイナミクスが
すごく生きてくるわけですねぇ。とても速く演奏する人多いですけれどそれだとあのいびつなアクセントが
よく聞こえないですよね。
T:ええ、そうです。一連のベートーヴェンと同じように、今回もオリジナルのテンポを守って演奏するつもりです。でもベルリオーズが書いたとおりの遅いテンポで初めて演奏しているのはなんとピエール・ブーレーズなんです。70年代初めにロンドン交響楽団との録音がありますが、それを知ったときは本当に「大ビックリ」しましたね。彼」はベルリオーズが書いたテンポをちゃんと守っている。
I:その時にはもう原典版が出ていてそれを見て判ったわけですか?
T:いえいえ 実はブライトコップ版のスコアにも基本のテンポに関しては原典版と同じくきちっと書かれているんです。
I:なんだそれじゃあスコアを見れば納得のいく事なのですね?
T:そうです。ところがみんな速く演奏してきて、伝統的な演奏ありますよね、例えばピエール・モントゥー、シャルル・ミュンシュ、マルケヴィッチなどの演奏を聴いてみるとみんな速く演奏しています。
I:それって慣習ですか?
T:いわゆる伝統というか、「慣習」ですね。本当に随分違います。しかしそれはそれで面白いです。
ミュンシュが振っている「幻想」のヴィデオを見たことがあるのですけれど、彼は50センチくらいある長い指揮棒を「行けーーっ!」っていう感じでビュンビュン振っていて迫力ありますよ。
5楽章なんてもうどんどん行ってしまって凄い速さです。
I:そういうスタイルが当時の聴衆にはアピールしたんでしょうね。その時代の空気を反映しているという面もあるでしょうね。
T:さて今度の演奏会ではどういう演奏が出来ますか・・・
ベルリオーズの書いた奇想天外なオーケストレーションも含めて原典に忠実なテンポを再現してみたいと思っています。
I:私も学生オケで「幻想」やりましたし、プロになっても随分演奏してきていますのでいわゆる「慣習」的なテンポを身体で覚えてしまっているところがあり切り替えるのが大変になりそうです。
T:私も学生時代「幻想」を何回か弾きましたよ。
----閑話休題------
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[パワフルなサウンドって?]
I:ところで私はやはり大人数の弦楽器群から出てくるあの「ブン」っていう迫力がどうしても欲しいですね。
なんて言うんでしょうか、余分なエネルギーっていうか 男の人が弓を一降りした時のあのパワーが欲しいんです。
T:えぇ またそれも面白いですけれどね(笑)
I:昔の話ですけれどそういうことを言っている人の話を聞いたことありますね。東京の某オーケストラで昔は男性しか採用してなかったんですよね。「オーケストラでフォルテで和音を弾いたときの出てくる音の勢いが男ばかりだとやっぱり違うんだよね・・・」っていう事を言われてましたね。
T:そうでしょうか?
I:世に言われる巨匠という人達ってやっぱり女性より圧倒的に男性の方が多いじゃないですか・・・
なんて言うかそういう種類の音の魅力っていうはあると思います。
T: でも今はそうでもないでしょう^^? まあ確かに音楽家っていうのは洋の東西を問わず男の職業だったんですけれどね。
I:今でもウィーンフィルは男だけですよね。
T:今はもうウィーンフィルだけでしょ、チェコフィルもこの間聴きに行ったら随分女性の奏者がいましたね。もう男のオーケストラじゃなくなってしまいましたね。ウィーンフィルはもう特別天然記念物みたいなものです。(笑)
I:えぇ、ウィーンフィルは頑なに男だけっというのを守っているみたい。
私は思うんですけれど男の人がヴァイオリンを構えた時のこの辺り(肩・首)の厚みがやっぱり全然違うんですよ。
T:私は太ってますけれどね(笑)そのおかげでで楽器が鳴るっていう話は聞いたこと無いですね。
I:えっ、ありませんか?
大きな楽器だとすこしはあるかもしれませんね、でも話はちょっと違いますけれどその人が演奏する「音色」ってその人の体つきと相似性がありますよ。例えば握手したときのその手の感触が音色に通じている・・・みたいな。
分厚くて柔らかい手の人はやはりそういう音色。小さくても力強い感じの手の人はやはりそういう感じですよ。
T:そうですね、楽器が体に響くっていうのはあるのかもしれないですね。
男女に関係なく体が大きければ良く響くってことはあるかもしれない。
I:身体のウェイトを上手に活用できれば小さな楽器だったらまず男女に関係なく十分に鳴らせるんじゃないかな?
T:今は大きな楽器だって女性奏者は多いし、金管楽器だってたくさんいますよ、殆ど関係ないですよ。
I:身体の違いもその鳴り方や音色に関係あるのかもしれないけれどそれよりも「音」そのものへのイメージの持ち方の違いなんじゃないのかな?
ほらヨーロッパの人で体の大きな人なんか特に喋る声の響き?響かせ方?がちがうでしょ。日本人よりずっと身体や頭に充分響かせてうんと太くて柔らかに聞こえますよね。
そういう、音そのものへのイメージの持ち方が大事なんじゃないかな っと思います。
T:そうですね、ドイツでテレビを見ているとニュースキャスターの声なんか女性でも明らかに低くてよく響いている感じですね。
I:スペインでもわりと低かったですね。例えば「バール」(酒場)へ行くとああいうところでもドミンゴみたいな声のオジサンがいたりするんですよね(笑)
「ああっ すごい美声!!」って思ってしまう人が多いんですよ。骨格の違いから来るのかも知れませんが・・・。
T:楽器の場合は私は本当にそんなに身体や男女の差はあまり関係ないと思いますよ。幻想交響曲でもだいじょうぶ(笑)
I:なんだか人数が少ないと目一杯弾かないとバランスが取れなくて音楽にならないんじゃないかっていう心配があるんですよね。あんまり頑張って弾くとついつい他が聞こえなくなって、大きな音を出すことだけに没頭してしまいそうで。まあこれは自分の問題なんですけれどね。
T:そんなに頑張らなくてもだいじょうぶですよ。
幻想はもともとそんなに大きな編成のために書かれているわけではないですから無理しないで演奏しましょう。
I:そうですね。大きな編成の為の曲と言うことはあまり意識しないで音楽作りしていきましょう。
今日はどうもお忙しい中有り難うございました。
[to be continued]

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Yoko&kaz. 2003.1.25.インタビュー